少し、電池の話をしよう。ソフトバンクC&S、次世代セラミックバッテリー「Tag」を発表


どうもどうも、ついにポータブックが届きましたやぎこちゃんです。
ジャンクな品を買ってしまったため分解して中のチップをショートさせてゴニョゴニョしてて、気づいたら丸二日も記事書いてなかったんですね。精進します、はい。

今日の話題は、あの携帯電話会社の子会社であるソフトバンクコマース&サービス株式会社が発表した、次世代バッテリー機器のお話。
次世代バッテリー技術「Power Leaf」と題して今回発表されたのは、従来のリチウムイオン電池とは異なる「セラミックバッテリー」というものを使った、ネームタグ型バッテリー「Tag」です。どうでもいいですけど命名まんまですねこれ。

さて、まあいつもの流れでいきますと、容量がどうたらこれからの展望がうんたら……と書いていくのが通例ではあるのですが。

が。

一応これでもやぎこちゃん、高校時代は少し化学系のことやってたりしてましたので。
ちょいと今日は趣旨を変えて、「セラミックバッテリーってどこがどう違うのさ」っていうお話を、ほんのすこーし、かるーく説明してみたいと思います。
本当にかるーくかるーく説明するので、その辺詳しい方々、どうかツッコんだりなさらないでください……。ぼく一応専門は生物化学なんで(予防線)


ちなみにこれが「Tag」。薄かったり曲げられたりするらしいです。しゅごい。

基本的な説明から

とりあえず本製品のお話に移る前に、簡単に「どうして電池から電気が起こるの?」っていう説明をしたいと思います。
これをお話ししないと、なんでこの発明がすごいかってのが分かりづらいと思いますので。

皆さん、「イオン化傾向」というものをご存知でしょうか?
高校で理系選択した方とかだと、「リッチに貸そうかな、まあアテにすんな…」みたいな語呂合わせに見覚えがある方もいるかもしれません。
すごい端的に言ってしまうと、イオン化傾向ってのは水の中でイオンになりやすい度合いのことです。つまり溶けやすさってことです。
ちなみにイオンっていうのは、帯電して安定状態にある状態の原子のこと。水とか何かの液体に溶かしたり、ものっそい高電圧かけてあげたりするとイオン化します。この辺詳しく話すと長くなりますので端折りますけれども。

で、今のところ見つかってる金属の中では基本的にリチウム、元素記号だと「Li」が一番イオンになりやすい(=イオン化傾向が一番高い)んですね。
そして、他のイオン化傾向が低い金属との、溶けだそうとするエネルギーの差が電気エネルギーになって放出されるというわけです。

もうちょい詳しくお話しすると、リチウムが溶液中に溶け出すとき、

Li → Li+ + e

っていう反応が起こります。
ちなみにLi+ってのはリチウムイオンのこと、eってのは電子のことで、電子に関してはまあ、電流の素となる粒子とでも思っといてください。つまり、何かの液体にリチウム溶かすと電子を放出するわけですね。
普通、例えば水に溶かしたときは、この電子が水と反応して水素が発生したりするんですが、他の金属イオンが溶けてる水溶液だったりを用いると、電子と金属イオンが反応してただの金属が沈殿したりします。この辺も使う金属イオンによるんですけどね。

で、この性質を用いたのが電池なわけです。
負極をリチウム・正極を適当な材料(本当は適当じゃないんですけどね!!!)とし、特殊な材料で間仕切りしたイオン溶液の両端に極を設置、最後に極どうしを繋いであげると、上の性質がいい感じに絡み合って電気が流れてくれます。

大雑把に言えば、リチウムが導線や正極を経由して、イオン化傾向の差によるエネルギーで溶液中のイオンに電子を押し付けてるイメージ……とでも言えばいいのでしょうか。で、その押し付けてる電子がたくさん集まって電気の流れになる、みたいな。

あ、本当はもっと複雑な材料とか使ってますからね、こんな簡単な話じゃないですからね。普通リチウム単体を水とかの溶媒(=溶かす側の液体)に浸けたら、そのまま溶けて消え失せますし。
今お話ししたのは、ごくごく簡単な仕組みというか基礎の基礎の話ですから。この辺お話しすると長くなるので(ry


図解しようと図を描いたはいいものの、むしろ分かりにくくなってる感がすごいですね、はい。
ちなみに画像のファイル名は「てきとう.jpg」です。3分で書き上げました。

……つまりまあ何が言いたいかって言うと、「基本的に発電にはなんかの溶液が必要」ってことです。何かをイオン化させないとそもそも電力発生しませんし。
とりあえず上のごちゃごちゃした説明が分かりにくかったりした方は、これだけ覚えていただければいいかと……。時間返せとか言わないで下さい。

セラミックバッテリーの何がすごいのか

さて、めちゃくちゃ投げやりな前置きを経て、やっと本題に入ります。
ここまでイオンだの電子だのと長々話してきましたが、果たしてセラミックバッテリーは従来のバッテリーとどこが違って、何がすごいのでしょうか?
その答えは、ズバリ「全部が固体で出来ていること」です。ここがこのバッテリーの一番すごいところであり、最先端な場所なのです。

上でも見ていったように、まず基本的には何かの溶液がないと電池は流れないんです。ここで大事なのは、溶「液」であることで、つまりは液体なわけです。
身の回りを見渡せばわかるように、固体が固体に溶けるなんて現象はほぼ起きません。というか全く起きないと言っても過言ではないでしょう。ということは、当然固体中をイオンが流れるなんてほぼムリなわけです。

……いやまあ実際、いくつかこのような材料は開発されていたんです。
ですが、どれも液体に比べてイオンが生成されにくく(=電気が発生しにくく)、やはり電池に向きそうにはありませんでした。
1980年代にリチウムイオン電池が開発されて以来、電池というものの大きなブレイクスルーがなかなか起きなかった理由のひとつは、これだったのかもしれません。

しかし2016年、電池というものは大きな進展を遂げることとなります。
東京工業大学物質理工学院とトヨタ自動車の共同開発により、ついに「固体の中を溶液と同等にイオンが流れる」という夢のような物質が開発されたのです。
それが、「Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3」という物質。意味が分からないと思いますが、まあこんな化学式もあるんだよ的な感じに思っておいてください。
もちろんまだ完璧な材料というわけではありませんが、それでもかなりの期待が寄せられている材料であることに間違いはないでしょう。
実際、現在さまざまな企業や大学において、この材料を用いた研究がなされています。
きっとこれから近い将来、この材料(もしくはこれが改善された材料)はかなりポピュラーになっていくのではないでしょうか。


Nature Energyより引用(http://www.natureasia.com/ja-jp/nenergy/interview/1)。ちょっと詳しく見るとこんな感じになってます。

まあ実際問題、「Tag」がこの材料を使ってるかは分からないんですけれども……(ここまで長々話しておいてアレですが)。
ですがこれに準じた素材を使っていることは十分考えられますし、まあこんな未来も見えてるんだよー、くらいに見ていただけるとありがたいなぁと思います。

おわりに

さて、駆け足でしたがかるーい説明をさせていただきました。分かりにくい点もあったとは思いますが、まあその辺はググったりして頂けるとありがたいかと()
この「Tag」には、正直まだまだ改善の余地があります。保持する電気容量は低いですし、発生する電力も0.4Aと、スマホ一つ充電できません。というかそもそも、まだ値段すら発表されてませんし。
ですが、それはこれからの可能性があるということでもあります。きっと将来、スマートフォンやノートパソコンにこういったバッテリーが搭載されるという日も近いのでしょう。
ちなみにこういった材料化学の分野に関しては、日本ってかなり上位だったりもします。最近中国とかの新興国も台頭してきていますが、その辺は頑張っていただきたいところ。

このようなセラミックバッテリーには、もちろん曲げられたり薄型化が出来る、といった利点もあります。
しかし、全固体バッテリーの最大の利点は、液漏れが発生しないことや、有機溶液を使わないことによる発火性の低減などの点。
様々な製品の安全が叫ばれている今、これからも、このような分野は大きく発展していくことと思います。
何が言いたいって、かがくのちからってすげー!ってことです。

ということで、これからの科学の発展に大いなる期待を寄せつつも、この記事はこれにて終わりとさせていただきたいと思います。
次は何書こうかなぁ、ポータブックネタでも書こうかなぁ……。

[最終更新日]2017/07/22

この記事を書いた人

やぎこ

やぎこ

物書きとか色々を中途半端にやりながら大学浪人してる18歳。 ミスチルならどの曲でも歌えるのが特技です。 ヤギのように雑食で生きていきたい所存。 @yagikochでTwitterはじめました。

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